DJIは6月10日に、ポータブル電源シリーズの新製品として「Power2000」を発表した。これまでのラインナップは、Power500と1000だったが、Power2000はバッテリー容量が2000Whと倍増したうえ、スマホでの制御など最新機能を搭載したモデルである。
Power2000の価格は15万1800円で同日発売、同時に、既存モデル「Power1000」の後継モデル「Power1000 V2」も発表、WEBストアでは8万5800円だ。
バッテリー容量2048Wh・最大2700W出力が可能
UPSモードでデスクトップPCも安心
「Power2000」
Power2000はその名の通り容量がPower1000の2倍となった2048Whの製品で、サイズは448×225×324mm、重さはPower1000の13kgから22kgへと、1.7倍に留めたのが特徴だ。連続出力はPower1000の最高2400Wから2700Wに向上しており、同時に利用できる機器に余裕がある。
内蔵するのは「リン酸鉄リチウムイオン電池」で、安全性を確保。4000回の充放電サイクル後も80%の容量を維持、10年間の寿命がある。また、26カ所の温度センサーが常時監視し、異常に対応するために内蔵された21個のヒューズで対応。また、ボードにナノメートル級のコーティングを施し、偶発的な水の侵入や屋外での結露を防ぐ。
高強度の構造設計で、静的圧力による耐荷重は1トン、また、地震やオフロードでの激しい揺れがあっても正常に動作する。
DJIでは、Power2000の満充電で、携帯電話114回、デジタルカメラ118回、ノートパソコン18回、コーヒーメーカー110分、車載冷蔵庫38時間、電子レンジ2.6時間の充電ができるとしている。
出力端子は、ACが4、USBのType-Cが 4、Type-Aが4、SDCが2で、Type-Cでは140Wと65Wの出力が可能だ。SDCはクルマやソーラーパネルからの給電やDJIのドローンの急速充電に利用する。
AC出力は、
100~120V、25A、50/60Hz
220-240V、13.6A、50/60Hz
が可能で、バイパスでは
100~120V、12A
220~240V、10A
となる。
USB Type-A出力は、
5V、3A
9V、2A
12V、2A
で、QC2.0およびQC3.0プロトコルに対応し、1ポートのみを使用する場合の最大出力は24W。2つ以上のポートを同時に使用する場合、各ポートはデフォルトで5V/2A/10Wの出力となり、高電圧でのネゴシエーションには対応しない。
USB Type-C出力は、
5V、5A
9V、 5A
12V、5A
15V、5A
20V、5A
28V、5A (EPR)
で、C1とC2は最大出力140W、C3とC4は最大出力65Wとなっている。SDC出力は9~28V、最大12Aだ。
入力は、ACが
110~120V、15A
220~240V、10A
で、SDC端子では32~58.4V、60Aまで入力ができる。
Power2000にはUPS機能を内蔵しており、停電時は0.01秒で電力供給に切り替わる。完全に0ミリ秒で切り替わるのではないので、医療用装置やデータサーバーなどでの利用には注意が必要だ。
充電時間は、通常の1200W入力で約150分、高速モードの1500W入力で114分、0%から80%までなら85分で充電できる。充電時はファンが回るが、30dB以下で冷蔵庫より静かだ。
また、自動車からも充電可能で、1kWの車内充電器を使うと、145分でフル充電、1.8kWでは75分でフル充電できる。
DJIではソーラーパネルもオプションで販売しており、最高で200Wの出力で、Power2000を充電できる。
また、オプションのバッテリーを増設して、最大容量2万2528Whまで拡張できる。
最高出力を強化
スマホコントロールも可能に
「Power1000 V2」
Power1000の後継モデルとして、V2も登場した。バッテリー容量は1024Whで同じだが、最大連続出力は2200Wから2600Wに向上。サイズは変わらず448×225×230mmで、重量は13kgから14.2kgに増加している。
充電時間も、従来の70分から、56分でフル充電が可能となり、0〜80%は37分で充電できる。
AC出力が2から4に増え、100~120Vでは最大電流が12Aから20Aに強化されている。また、従来は別売品が必要だったBluetoothとWi-Fi機能を内蔵しており、Power2000と同様に、スマホアプリでの動作チェックやコントロールが可能となっている。
「Power2000」実機レビュー
大容量と高出力の安心感
増設バッテリーに豊富なオプションも◎
2048Wh容量になったPower2000を自宅で使ってみた。段ボールに入って届いた箱は、結構な重さで持ち歩くのは辛かったが、箱から実際に出すと、がっしりしたハンドルがあり、これなら持ち歩くのも苦ではない重さだ。
簡易なクイックスタートガイドしかついていないので、マニュアルはWEBで参照するカタチだ。スマートフォンに専用アプリをインストールし、Bluetoothで接続すると、家庭内Wi-Fi接続の設定もでき、ファームウェアのアップデートもほぼ自動で行われる。
このアプリでは今現在の、端子ごとの入力または出力状況が参照でき、バッテリーの残容量、残り時間、AC出力のON/OFF指定まで可能だ。
また、WindowsとMac用のアプリもあり、こちらはUSB Type-C接続で、リアルタイムモニターはできないが、ファームアップやログファイルの取得が可能である。
充電のほうは、付属のACケーブルを入力端子に挿すだけで開始される。通常は1200Wでの充電が行われ、コネクターの横の充電モード切り替えスイッチで1500Wでの高速充電に切り替えることができる。実際にやってみたが、1200Wでも、50%から満充電まで60分で終了した。
Type-CやType-Aはモバイルバッテリーと同様に、ケーブルを挿して機器を接続すれば、自動的に充電ができる。AC出力はPower2000の右上のスイッチを押すとONになる。スマホアプリでもON/OFFが可能だ。
まずは、90Whのバッテリーを内蔵したノートPCを0%から充電してみた。Type-Cでは19.6V/2.78Aの55Wで給電され、充電が終わると、Power2000の残り容量は95%となった。90/2000でちょうど4.5%消費されたことになる。
手持のスマホやデジカメ、ノートPCを一気に繋いでみたが、合計で140Wにも満たず、Power2000の容量はなかなか減らない。
手持ちのLCD白熱球ランプを繋ぐと、残量78%時点で42時間利用可能と表示される。特に複数の機器を繋いだ時に、残り時間を自分で計算するのは面倒だから、残%だけでなく、残り時間を表示してくれるのはありがたい。特に、災害や停電で、あとどれくらい持つのかはとても安心できるからだ。
ちなみに、停電で一番困るのが冷蔵庫だ。特に冷凍室のものがすべて解凍されると悲惨だ。最新の冷蔵庫を調べてみると、550Lのもので、年間消費電力量は250kWhなので、1日当たり700Whで、Power2000では、単純計算で約3日間持つことになる。実際はDC-AC変換のロスなどもあるだろうから、それより少なくなるだろう。1000Whでは1日もつかどうかになるので、非常用を兼ねて選ぶなら、2000Whは余裕がある。
Power2000は冷却ファンを搭載しており、充電時、放電時ともに内部温度によって動作する。環境温度によるだろうが、PC1台やスマホ2台程度なら、ファンは回らなかった。低音の小さな音なので(30db)、気になることは少ないだろう(夜中の室内で隣でファンが回ったら止めたくなるかもしれない)。
ディージーチェーンで増設できるバッテリーは「Power Expansion Battery 2000」で、SDCポート×2を搭載、重さは16.5kgである。直販サイトでは12万1000円で購入可能だ。
SDCポートには自動車の発電機からの出力やソーラーパネルの発電を入力してPower2000の充電ができる。
自動車の車内電源ソケットから充電するだけなら、「Power車内電源ソケット-SDC電源ケーブル(12V/24V)」(8800円)で接続できる。
「Power 1.8kWソーラー/車内超急速充電器」(5万9400円)と、「Power 1kW車内超急速充電器」(5万5000円)で、自動車の発電機やバッテリー、ソーラーパネルからPowerシリーズに電力を供給できる。
1.8kWのほうはソーラーパネルとRVのオルタネーターへの同時接続に対応。合わせて最大1200Wの太陽光電力と600Wの車からの連続給電で、Power1000と拡張バッテリーを充電し、約40分間のドライブで1024Whの電力に到達、自動車の電気系統の容量を拡張する。また、バッテリーの消耗を防ぐために、RVのバッテリーに接続してPower 1000でリバース充電することもできる。
1kWは車のオルタネーターの余剰電力を利用して、Power1000と拡張バッテリーを最大1000Wで充電し、約78分で1024Whの電力に到達。こちらも、車のバッテリーに接続して、バッテリーの消耗を防ぐためにPower1000でリバース充電することもできる。
自宅での停電時やキャンプで欲しくなるのが、ソーラーパネルだ。DJIのWEBでは以下の3種類を販売している。
「Zignes 120W ソーラーパネル」
(4万8840円)
出力120W、展開時1365×580×36 mm
収納時365×580×70 mm、重さ5.6kg
「IBCPOWER 200W Foldable Solar Panel」
(6万9190円)
出力200W、展開時2126×608×3.5 mm
収納時610×608×45 mm、重量8.25kg
「LINKSOLAR 200W Flexible Solar Panel」
(5万5990円)
出力200W、展開時1466×783×24 mm
重量3.2kg
なお、100W以上の出力のソーラーパネルをPowerシリーズに接続するには、「Powerソーラーパネル・アダプターモジュール(MPPT)」(9680円)を必要とするので、忘れずに購入しよう。「充電キット」という名称で、複数のソーラーパネルとモジュールのキットもある。
「ハンドトラック」(1万6170円)は、Powerシリーズの電源ステーションと拡張バッテリーの移動用に設計されており、拡張バッテリーのネジ穴で固定することができる。Power2000を手持で運ぶのはつらいので、キャンプで持ち出す人は、こちらも合わせて購入するといいだろう。
☆
ポタ電選びの基本は、バッテリー容量と最大出力、そして価格である。
Power2000は容量が多い分、22kgあるが、余裕の2048Whという容量と、最大2700Wの機器が使える安心感は非常に大きい。動作が確認されているソーラーパネルが3種類もオプションとして用意されているのも安心である。
自宅で買う理由としては、災害や停電対策を考えがちだが、無線電源と考えると、とても便利なものでもある。庭やバルコニーで、DIYやバーベキューを楽しみたいというときにも、延長ケーブルでコンセントから伸ばす方法を悩む必要もないし、2700Wまでの機器が使えるので、弱いケーブルより安心だ。
Power2000は、16万円以下という、2000Wh搭載製品として、お求めやすい価格設定だ。ポータブル電源の購入を考えているみなさんは、考慮に値する製品である。
